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AIによるLTV活用で運用型広告を高度化 Value Based Biddingの応用

本日は運用型広告における領域でAIによる予測LTVを使った施策についてご紹介したいと思います。
運用型広告には様々な入札戦略がありますが、今ではほとんどの広告主が自動入札を適用していると思います。

自動入札は非常に便利な機能で目標に対して最適なキーワードや広告を選択し適切に目標に対して自動で入札してくれるということは、目標設定の仕方次第で広告成果が大きく変わることを意味しています。多くの広告主は自動入札の最適化対象(目標)をウェブサイト上のコンバージョンや広告からの直接的な売上に設定していますが、本当にそれでいいのでしょうか?
本来広告主としては、最適化を行いたいポイントは「コンバージョン」や「直接的な売上」よりも「LTV(顧客生涯価値)」となるはずで、短期的な売上よりも最終的にたくさんの利益をもたらしてくれるユーザーを優先的に集客したいと考えているのではないでしょうか。

LTVを広告媒体に連携する必要性と課題

LTVで入札の最適化を行う必要性についてECサイトを用いて以下に例を説明します。
①初回に10,000円の商品購入、その後のリピート購入はなし
②初回に3,000円の商品を購入、その後30日後に3,000円の商品を購入、さらに65日後に9,000円の商品を購入

この場合、LTVは①10,000円に対して②は15,000円となるので②のユーザーのほうが広告主にとって価値があるといえます。

この②に対して自動入札を最適化させる仕組みはValue Based Biddingとオフラインコンバージョンを組み合わせると機能上は実装出来るのですが、あまり普及していません。

その理由は主に以下の2点だと考えています。
A:広告プラットフォームへ値(LTV)の入力に手間がかかる
B:LTVの計測に時間がかかるため多くのケースで入札が機能しない

Aについては顧客データ基盤(CDP)の普及により、以前に比べると難易度は下がっていると思いますが問題はBになります。Bの問題については後述しますが、本記事では問題Bを解決する手法について触れたいと思います。

オフラインコンバージョンのインポート機能について

まずは、オフラインコンバージョンのインポートについて説明します。
ECなどオンラインで商品を見たユーザーがその場では購入せず、実店舗に来店して購入するなど、オンラインの広告がオフラインでの成果に繋がることも少なくありません。

また来店予約をコンバージョンポイントとして設定しているキャンペーンでは、来店後に実際に商品を購入したのか、していないのか2つのケースに分岐すると思います。
これらのケースで役に立つのがオフラインコンバージョンインポート機能です。

この機能自体はGoogle広告に加えYahoo!広告でも一般的なものになります。

Value Based Biddingとは?

次にValue Based Bidding(VBB)についてご説明します。

「Value Based Bidding」を日本語に訳すと「価値に基づく入札戦略」となります。「価値」は自由に定義することが可能で一般的には売上とするケースが多いと思います。
コンバージョン数だけを指標とするのではなく、「売上」にフォーカスすることで費用対効果を測るための自動入札戦略です。
VBBの入札戦略には「目標広告費用対効果(ROAS)」と「コンバージョン値の最大化(CV値最大化)」の2つがあります。この2つを理解するためには、まず「ROAS」と「コンバージョン値」の考え方について理解する必要があります。

上記で説明したオフラインコンバージョンのインポート機能とValue Based Biddingを組み合わせれば、自動入札としてコンバージョンユーザーのLTVを値としてGoogleに返すことが可能になります。
ですが、ここでオフラインコンバージョンインポート機能の制約の影響を受けます。
オフラインコンバージョン自体はGoogleでは、GCLIDと呼ばれるクリックごとに媒体側から発行されるクリックIDをキーにクリックとコンバージョンを紐づける仕組みになっているのですが、そのクリックIDの有効期間は90日になります。

つまり広告クリックから90日以内に発生した売上でないと媒体側に戻せません。前半でお話した例をもとに有効期間を見ていきたいと思います。

①初回に10,000円の商品購入、その後のリピート購入はなし
②初回に3,000円の商品を購入、その後30日後に3,000円の商品を購入、さらに65日後に9,000円の商品を購入

②の場合、初回の購入(クリック)から9,000円の商品購入まで期間は95日間要しているため、媒体側に送信出来る(GCLIDが有効な期間)値としては6,000円になってしまいます。
LTVを90日で判断するという事は少ないと思いますし、理想的には1年以上先まで範囲を広げたいところだと思います。
また、仮に90日めいっぱい計測してその値を90日後に媒体に返すとしても、広告クリックから90日後にようやくLTVの値を媒体に学習させることになり、自動入札への反映スピードを考慮すると時間が空きすぎるという事も懸念点です。

これらがユーザーのLTVを媒体側に送信して自動入札を最適化することが難しかった理由です。

AIを活用してLTVを媒体に返した事例

シンカーでは前述したLTVを媒体側に送信する際の時間の問題をAIの活用により解決しました。

Value Based Biddingとオフラインコンバージョンを組み合わせる施策については変わらないのですが、時間を要すLTV計測の部分をAIを活用した予測LTVとして値を瞬時に計算し、媒体に返す事で対応しています。

具体的には過去の結果を教師データとしてAIに学習させ、初回購入時に取得出来るデータから1年後のLTV予測を行います。初回購入時に取得出来るデータに関しては、広告主によって様々ですが、70%から80%の確率で上位顧客になるかどうかの予測が可能です。
これにより、将来(1年後)の売上を媒体側に送信することが可能になりました。

従来のROASによる入札とLTVへ入札を変更する違いは以下の通りです。

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事例紹介

アパレルECでの事例を一部ご紹介したいと思います。

このクライアントでは初回購入でエントリー商材にあたる単価の安い商品が売れやすく、購入後のCRM施策で単価の高い商品のリピート購入へ一定数引き上げられる事が分かっていました。しかしCRMでのリピート施策がある一定以上は伸び悩み、広告集客時点である程度見込みが高いユーザーに配信すべきではという課題にぶつかりました。

従来のコンバージョン最適化による入札からLTV最適化の変更による変化を以下に記載します。

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実数は紹介が出来ないため、このように以前のコンバージョン最適化での結果を100とした時の変化を記載しています。IMPからCVRまではほぼ変化がありませんが、ROASの時点でコンバージョン最適化キャンペーンを上回り10ヶ月後のLTVでは2.2倍と結果がより大きくなっているのが分かります。
また同時期に配信していたFacebook,Instagram広告に比べても10ヶ月後のLTVは1.5倍高い結果が出ました。

注意すべき点はLTVの計測には時間がかかるため、すぐにキャンペーンの良し悪しを判断出来ない点にあります。CV、CVRまでの結果にあまり変化はなくても中期的なLTVとしては以下事例のように大きく結果が異なる可能性が高いので検証には十分な時間が必要になります。

今回はGDNでの検証となりましたが、検索広告でも活用は可能になります。類似の施策として検索広告での事例がGoogleオフィシャルの事例として記載がありますので紹介させていただきます。

Google タグマネージャー を活用したソリューションで将来価値を予測し価値の高い取引の獲得に成功したバイク王の事例
https://analytics-ja.googleblog.com/2020/08/google.html

まとめ

運用型広告においては多くの広告主が自動入札を使用しますが、これはコンバージョンや売上のみに最適化されるために顧客生涯価値(LTV)を見逃してしまう問題があります。効果的な広告のためにはLTVに基づく入札(Value Based Bidding)が必要です。ただし、LTVデータの広告プラットフォームへの連携は、入力手間と計測時間の問題から難しく加えて、オフラインコンバージョンのインポート機能では、クリックIDの有効期限が90日しかなく、多くの場合でこの期間内にLTVを計測しきれない課題があります。

この問題に対応するために、AIを使用して予測LTVを計算し、迅速に広告プラットフォームに値を返す方法を可能としています。
実際の検証結果でLTV最適化は従来のコンバージョン最適化よりもROAS、LTVともにより高い結果を出しています。

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